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【オゾミス最新作】『ママ』の書評・レビュー【ネタバレなし】

みなさんこんにちは。サイジです。

読書で悩む人
読書で悩む人
『ママ』の特徴・感想をネタバレなしで知りたい

こちらのご要望を解決していきます。

「ホラー系の新しい作家さんを発掘したい!」

「人間の怖さがにじみ出ているような小説が読みたい」

このように思われている方への記事になっています。

なかでも以下に当てはまる方は、本作をオススメします。

・ホラー系小説が好き
・ライトに読み進められる本が好き
・愛する子どもがいる
・スリルを味わいたい

編集者がつけたキャッチコピーは「『イヤミス』を超えた、世にもおぞましい『オゾミス』誕生」──。

小説丸より https://www.shosetsu-maru.com/node/1299

人間の憎悪はここまでおぞましい行為をさせるのか、と読んでてハラハラするオゾミスストーリーでした。

『ママ』のあらすじ

『ママ』のあらすじ

主人公の後藤成美は、ひかりという愛娘を持つシングルマザーです。

事故で彼を失った直後の妊娠で、身寄りもなく仕事しながら女手一つで育てる大変な生活でしたが、ひかりの存在が幸福をもたらしていていました。

その日、ひかりの誕生日ケーキを買って帰ったとき、絶望的な瞬間を目の当たりにし、成美は意識をなくしてしまいます。

目を覚ますとそこは、見たこともない部屋に1人という状況でした。

手錠をはめられ身動きできないことを理解すると、成美は監禁されていることに気づく。

ひかりは無事なのか。犯人の目的は何なのか。

監禁された状態が続くなか、やがておぞましい真実が明らかとなる――。

『ママ』の恐ろしさ

監禁される状況は分かりやすい恐怖ですよね。

ただこの小説、普段の日常生活でもある人間の悪意の怖さもふんだんに散りばめられています。

パートで生計を立てる生活は大変ですが、ひかりがいることで幸せな日々を過ごしている成美。

ですがその日常生活に、薄暗い影を落とす出来事がちらほら起こります。

この出来事が『ママ』の持つじめじめした雰囲気を助長しているので、ついついクセになって読み進めてしまいます。

著者紹介

著者の神津凛子さんは、『スイートホーム』で第13回小説現代長編新人賞を受賞されており、2019年デビューのこれからが楽しみな作家さんです。

ちなみにデビュー作『スイートホーム』もオゾミスらしいです。

タイトルと内容のギャップが気になりますね。

「幽霊とかお化けは、信じない人にとっては存在しないものじゃないですか。そうじゃなくって、やっぱり人間が一番怖いと思うんです。日本のホラーの定番は黒髪ロングの女性ですが、私にとっては『リング』の貞子よりも、望月峯太郎さんのマンガ『座敷女』に出てくる女の人のほうが強烈に怖い。現実にいるかもしれない、と思わされるからです」

小説丸より https://www.shosetsu-maru.com/node/1299

神津さんは子どもの頃からホラーへの感受性が強く、特に人間を一番恐ろしいと思っていたようです。

『ママ』は受賞後第一作で、神津さんらしい人間のおどろおどろしさが前面に出ている作品になります。

『ママ』の特徴・感想

『ママ』の特徴・感想を3つにまとめました。

特徴・感想①:幸福と絶望のギャップ
特徴・感想②:モノトーンの過去
特徴・感想③:ラスト一行の意義

それぞれ解説していきます。

特徴・感想①:幸福と絶望のギャップ

手のひらから伝わる柔らかな温度はひかりの命の温もりだ。わたしの存在理由。わたしのすべて。胸が締め付けられるほど愛おしい。ひかりがいなければ知り得なかった感情。

『ママ』p132より

「帰るところもなく、愛する人にも会えない。希望も理由もない世界で生きて行かなくちゃならない苦しみは想像以上に辛い。これから成美さんはその世界で生きていく。それって結構地獄だよ。地獄って死後の世界だと思うだろ? でもね、地獄はこの世にある。圧倒的な孤独! それこそが地獄なんだよ」

『ママ』p249より

『ママ』はひかりとの生活の日々と監禁された状況がしばらく交錯しながら進んでいきます。

つまり、幸せな日々と絶望的な時間を比べながら読むことになります。

2つの状況にはギャップが大きいので、成美の感情が痛いほど伝わってきます。

特にひかりといる時間が至福のひとときである描写が随所に見られたので、ひかりと引き離されて監禁されている状況はまさに地獄のような時間に感じます。

特徴・感想②:モノトーンの過去

身持ちの悪い母は、幾度となく不貞を働いた。父はそんな母を許し続けた。幼いわたしは、人目もはばからず昼となく夜となく逢引のために出かけていく母のことも、それをとがめるでもなく黙認する父のことも理解できなかった。

『ママ』p225より

『ママ』にはひかりとの生活のあいだに、成美の両親について随所に書かれています。

不貞を働き続ける母親と、それを黙認する父親。

複雑な家庭環境で育ちながらもなんとか自立し、やがてひかりを産んで大切に育てていく。

過去とは完全に決別したかのように思っていた成美でしたが、突然、監禁という暗闇に突き落とされます。

それは、成美の過去の一部が原因だったのです。

特徴・感想③:ラスト一行の意義

嘘をつく必要があるとは思わなかった。それに、嘘が通用する相手ではないことも、その目を見ればわかった。恐怖はもう感じていなかった。体の奥深くで燻る怒りが、じわじわと恐怖心を凌駕していた。

『ママ』p151より

『ママ』は終始、ひかりがストーリーのキーパーソンになります。

ところがひかりのいない状況でもがき苦しむ成美の姿が後半に集中して描かれているので、読んでいるぼくもかなり不安な思いになりました。

一向に救われる気配を感じないので、読んでるこっちが早く救われたくなるんですよね。

それだけにラスト一行はめちゃくちゃ意義深いものとなっています。

最後に

ここまでお読みいただき、ありがとうございます。

新進気鋭のオゾミス作家・神津凛子さんが生み出した最新作『ママ』。

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