みなさんこんにちは。サイジです。
こういったご要望をネタバレなしで解決します。
『むかしむかしあるところに、死体がありました。』は以下の方にオススメです。
「なんでもありのシュールな小説を読みたい」
「本屋大賞にノミネートされた作品を読みたい」
「長編小説の箸休めに気軽に読める短編を挟みたい」
ミステリー小説が好きな人にとっては新感覚で楽しめる作品となっています。
目次
『むかしむかしあるところに、死体がありました。』のあらすじ・構成

本作には5作品が収録されています。2020年本屋大賞にノミネートされ、現在13刷を発行しています。
『一寸法師の不在証明』
お姫様を鬼から守った一寸法師。打ち出の小槌で大きくなった彼は、ある計画を心に秘めておりました……。
『むかしむかしあるところに、死体がありました。』帯より
『花咲か死者伝言』
灰をまいて、花を咲かせていたお爺さん。お殿様からもらったご褒美を村に寄付するような優しい人でしたが、殺されてしまいました……。
『むかしむかしあるところに、死体がありました。』帯より
『つるの倒叙がえし』
村の青年が、宿に困っていたつうを泊めました。そのお礼にと、つうは反物を織りますが、それが高く売れると知った青年は、もっと織れとつうに迫ったのです……。
『むかしむかしあるところに、死体がありました。』帯より
『密室龍宮城』
亀を助けた浦島太郎は、連れていかれた龍宮城で飲めや歌え屋の大宴会。そんな中、伊勢海老のおいせが殺されました……。
『むかしむかしあるところに、死体がありました。』帯より
『絶海の鬼ヶ島』
鬼が島で行われた桃太郎とその仲間たちVS鬼たちの戦いは、桃太郎側の勝利に終わりました。でも本当の戦いが、そこから始まったのです……。
『むかしむかしあるところに、死体がありました。』帯より
一寸法師、花咲かじいさん、鶴の恩返し、龍宮城、桃太郎。日本を代表する昔ばなしの真実は、人間の欲望にまみれたものだったのかもしれないと思わせるような作品です。
著者紹介

青柳 碧人(あおやぎ あいと)
1980(昭和55)年、千葉県生れ。早稲田大学教育学部卒業。早稲田大学クイズ研究会OB。2009(平成21)年、「浜村渚の計算ノート」で「講談社 Birth」小説部門を受賞し、デビュー。小説執筆だけでなく漫画原作も手がけている。主な著書に「浜村渚の計算ノート」シリーズ、「ヘンたて」シリーズ、「朧月市役所妖怪課」シリーズ、「西川麻子は地理が好き。」シリーズ、「ブタカン!」シリーズ、「彩菊あやかし算法帖」シリーズ、「猫河原家の人びと」シリーズ、『むかしむかしあるところに、死体がありました。』などがある。
https://www.shinchosha.co.jp/writer/4984/より
他作品もミステリー要素があり、『むかしむかしあるところに、死体がありました。』は著者の磨き上げたミステリーと昔ばなしを掛け合わせた新感覚の小説です。
『むかしむかしあるところに、死体がありました。』の特徴・感想

『むかしむかしあるところに、死体がありました。』の特徴・感想を3つにまとめました。
特徴・感想①:昔ばなしの世界観をくずさない文章体
特徴・感想②:慣れ親しんだ昔ばなしの裏側
特徴・感想③:昔ばなしと絡みあう本格ミステリー
一つずつご紹介します。
特徴・感想①:昔ばなしの世界観をくずさない文章体
むかーしむかし、おばばがまだ小さい頃の話じゃ。この鬼ヶ島には四十頭ばかり鬼がおっての、今と同じく、みんなのんびり、暮らしておったんじゃ。
『むかしむかしあるところに、死体がありました。』p191より
本当の昔ばなしよりは大人びていますが、懐かしさを感じるには充分にやわらかい文章体です。
『むかしむかしあるところに、死体がありました。』は昔ばなしの世界観をくずさないことが肝になっています。
やわらかい文章体は世界観を維持するための重要な役割を果たしているんです。
もともと知っている昔ばなしなので、ゆっくり読んでも一話あたり25分で読み終わるくらい簡単な文章です。
特徴・感想②:慣れ親しんだ昔ばなしの裏側
ねえお爺さん、いわれのない罪を生み出すくらいなら、死者からの伝言なんてないほうがいいんじゃないだろうか。
『むかしむかしあるところに、死体がありました。』p81より
どの話も人間の欲望が絡んでいて、大人の昔ばなしというかんじです。
『花咲か死者伝言』は人の優しさと欲望が悲しい結末をむかえるんですよ。
昔ばなしでは勧善懲悪や良いことや悪いことををすればすべて自分に返ってくることを教えてくれますよね。
こちらの昔ばなしは「現実はそうとも限らないよ」というリアリティなメッセージが込められています。
ハッピーエンドではないけれど、架空の物語にさらに架空をほどこしているのでいやな気分にはならないのがいいですね。
特徴・感想③:昔ばなしと絡みあう本格ミステリー
庄屋を殺めたあとはしばらく、障子の奥の部屋の襖の向こうにでも隠しておく必要がありましょう。
『むかしむかしあるところに、死体がありました。』p140より
昔ばなしの設定をめちゃくちゃうまくトリックに活かしている本格ミステリーですね。
これが読みごたえあって面白かったですね。
短編集なので展開が早く飽きずに駆けぬけていけます。
昔ばなしでオチを知っているからこそ「どんな裏切りをしてくるんだろう」と思いながら楽しんで読めます。
『絶海の鬼ヶ島』はその最たる物語ですね。裏切られます。
最後に

ここまでお読みいただき、ありがとうございます。
『むかしむかしあるところに、死体がありました。』はどの話から読んでも面白いですが、『絶海の鬼ヶ島』だけ最後に取っておくことをオススメします。
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