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【2020年本屋大賞ノミネート】『流浪の月』の書評・レビュー

みなさんこんにちは。サイジです。

読書で悩む人
読書で悩む人
『流浪の月』の内容・感想をネタバレしない程度に知りたい。

こちらのご要望を解決していきます。

以下にあてはまる方は『流浪の月』をオススメします。

「本屋大賞ノミネート作品が読みたい」
「繊細な心の動きをとらえた文章が読みたい」
「世間と相いれない人物をフォーカスした小説が読みたい」

世間から見ると二度と会ってはいけなかったはずの二人が再会してしまったことで、つらく悲しい出来事が起こり始めます。

『流浪の月』のあらすじ・構成

あらすじ

あなたといることを、世界中の誰もが反対し、批判するはずだ。私を心配するからこそ、誰もが私の話に耳を傾けないだろう。それでも文、私はあなたのそばにいたい――。再開すべきではなかったかもしれない男女がもう一度出会ったとき、運命は周囲の人々を巻き込みながら疾走を始める。新しい人間関係への旅立ちを描き、実力派作家がいかんなく本領を発揮した、息をのむ傑作小説。

『流浪の月』カバー表紙より

主人公の家内更紗(かないさらさ)は現在アルバイトで生計を立てている。

更紗は9歳のときに当時19歳の佐伯文(さえきふみ)に誘拐されたと事件になった被害者です。

ただ、更紗は誘拐されたのではなく、自分から文についていったのです。

文は逮捕され15年間会うこともなかったが、あることがきっかけで二人は再開し、物語は動き始めます。

構成

『流浪の月』は全六章から構成されています。

一章 少女のはなし
二章 彼女のはなしⅠ
三章 彼女のはなしⅡ
四章 彼のはなしⅠ
五章 彼女のはなしⅢ
終章 彼のはなしⅡ

章によって話し手の視点が変わることで、感情の吐露がリアリティさを増しています。

『流浪の月』の著者紹介

凪良ゆう(なぎら・ゆう)

滋賀県生まれ。≪小説花丸≫二〇〇六年冬の号に中編「恋するエゴイスト」が掲載される。翌年、長編『花嫁はマリッジブルー』で本格的にデビュー。以降、各社でBL作品を精力的に刊行し、デビュー一〇周年を迎えた一七年には非BL作品『神様のビオトーブ』を発表、作風を広げた。巧みな人物造形や展開の妙、そして心の動きを描く丁寧な筆致が印象的な実力派である。おもな著作に『未完成』『真夜中クロニクル』『365+1』『美しい彼』『ここで待ってる』『愛しのニコール』『薔薇色じゃない』『セキュリティ・ブランケット』などがある。

『流浪の月』カバー表紙より

『流浪の月』を読むと、言葉ではうまく言い表せない心の動きを、巧みな比喩と豊富な語彙で的確に表現されています。

「好書好日」の取材でも「心の動き、絡み合いには力を入れてきた」と言われています。

(参考:https://book.asahi.com/article/12927311)

凪良ゆうさんの力が存分に発揮された『流浪の月』のみどころを、特徴・感想を踏まえて解説していきます。

『流浪の月』の特徴・感想

『流浪の月』の特徴・感想を3つにまとめました。

特徴・感想①:友達でも恋人でもない関係
特徴・感想②:もろく壊れそうな心の表現の秀逸さ
特徴・感想③:息をのむ二人の行く末

それぞれ解説していきます。

特徴・感想①:友達でも恋人でもない関係

わたしたちは親子ではなく、夫婦でもなく、恋人でもなく、友人というのもなんとなくちがう。わたしたちの間には、言葉にできるようなわかりやすいつながりはなく、なににも守られておらず、それぞれひとりで、けれどそれが互いをとても近く感じさせている。
 わたしは、これを、なんと呼べばいいのかわからない。

『流浪の月』p239~240

当時9歳の更紗はみずからの意志で文の家についていきます。

文から罪に当たる行為はされず、楽しいと思える時間を過ごします。

文が逮捕されてから15年が経ち、二人は再開し、関係を構築していきますが、とても奇妙なもの。会話文を読めば恋人のようなやり取り。

でも「文とは寝たくない」と言い切る更紗。文もまた更紗と似た感情を持っています。

なんとも表現できない二人の関係ですが、凪良さんの筆力が読み手と二人の関係を翻訳してくれているのでクセになってしまいます。

特徴・感想②:もろく壊れそうな心の表現の秀逸さ

どんな痛みもいつか誰かと分けあえるなんて嘘だと思う。わたしの手にも、みんなの手にもひとつのバッグがある。それは誰にも代わりに持ってもらえない。一生自分が抱えて歩くバッグの中に、文のそれは入っている。わたしのバッグにも入っている。中身はそれぞれちがうけど、けっして捨てられないのだ。

『流浪の月』p200

更紗も文も心の琴線にふれてしまうともろく崩れてしまうそうな人間です。

なので読み手もつい危ない橋を渡るように慎重に読み進めてしまいます。

ダイナミックな物語の展開こそありませんが、人間の持つ心の弱さを美しく正確に表現されています。

特徴・感想③:息をのむ二人の行く末

ぬるい涙があとから湧いて、文と初めて言葉を交わしたときに降っていた雨のように、私のすべてを濡らしてほぐしていった。

『流浪の月』p301より

更紗と文は再開し絶妙な関係を築きはじめるも、かつての誘拐事件が尾を引き、平穏に暮らせずに苦しむ日々が続きます。

徐々に居場所がなくなっていくなかで二人が出す答えを易しく見届けたくなります。

二人だけの真実は読者にしか共有されないので、味方でいてあげたいと思ってしまいますね。

最後に

ここまでお読みいただきありがとうございます。

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