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【2020年本屋大賞ノミネート】『夏物語』の書評・レビュー

こんにちは。サイジです。

読書で悩む人
読書で悩む人
『夏物語』の内容をネタバレしない程度に知りたい

こちらのご要望を解決します。

以下にあてはまる方は、『夏物語』をオススメします。

「読みごたえのある長編小説が読みたい」
「難易度の高い本に挑戦したい」
「女性視点の作品が読みたい」

2020年の本屋大賞にノミネートされた作品のなかで、一番の大長編です。

人工授精というセンシティブなテーマを題材にしていることからも読みごたえのある作品です。

『夏物語』の紹介

さっそく、『夏物語』の紹介をしていきますね。

①あらすじ

38歳で独身の夏目夏子は、第三者の精子を使った人工授精で出産することを決断した。

応援してくれる友人は一人だけ。仕事仲間や姉からは否定的な意見を言われ、周りと衝突してしまう。

そんななかある女性の一言が、夏子の決意を迷わせることになる。

夏子は出産の道を選ぶのか。夏子の逡巡が、命の重みを読者に問い質す。

②構成

『夏物語』は大きく分けて2部構成です。

第一部 二〇〇八年 夏

1 あなた、貧乏人?
2 より良い美しさを求めて
3 おっぱいは誰のもの
4 中華料理店にやってくる人々
5 夜の姉妹のながいおしゃべり
6 世界でいちばん安全な場所
7 すべての慣れ親しんだものたちに

第二部 二〇一六年 夏~二〇一九年 夏

8 きみには野心が足りない
9 小さな花を寄せ合って
10 つぎの選択肢から正しいものを選べ
11 頭のなかで友だちに会ったから、今日は幸せ
12 楽しいクリスマス
13 複雑な命令
14 勇気をだして
15 生まれること、生まれないこと
16 夏の扉
17 忘れるよりも

夏子が人工授精による出産をする話が書かれているのは第二部です。


第一部は夏子の姉・巻子が豊胸手術を受けようとしており、彼女の娘・緑子が嫌悪感を示している話です。

③評価

読みやすさ:★★☆☆☆
おもしろさ:★★★☆☆
オススメ度:★★★☆☆

文書体は易しいです。

扱う題材がデリケートで、男性批判がときおりみられたので、男性が読むとしんどくなります……。

ほとんどの会話文が大阪弁なので、関西圏以外の読者の方は読みにくく感じるかもしれません。


しかし女性、とくに出産を経験された方は、共感できる部分も多くあるのではないでしょうか。

『夏物語』の著者紹介

つづいて、『夏物語』の著者をご紹介します。

川上未映子(かわかみ みえこ)
1976年大阪府生まれ。
2007年『わたくし率 イン 歯ー、または世界』『そら頭はでかいです、世界がすこんと入ります』で早稲田大学坪内逍遥大賞奨励賞、
08年『乳と卵』で芥川賞、
09年詩集『先端で、さすわ さされるわ そらええわ』で中原中也賞、
10年『ヘヴン』で芸術選奨文部科学大臣新人賞、紫式部賞、
13年詩集『水瓶』で高見順賞、『愛の夢とか』で谷崎潤一郎賞、
16年『マリーの愛の証明』でGRANTA Best of Young Japanese Novelists、『あこがれ』で渡辺淳一文学賞を受賞。
他の著書に『すべて真夜中の恋人たち』、『きみは赤ちゃん』、『みみずくは黄昏に飛びたつ』(村上春樹との共著)、『ウィステリアと三人の女たち』など。
17年には「早稲田文学増刊 女性号」で責任編集を務めた。

『夏物語』より

川上さんは、『夏物語』について以下のようにコメントを寄せています。

わたしたちにとって最も身近な、とりかえしのつかないものは「死」であると思うのですが、生まれてくることのとりかえしのつかなさについても考えてみたいと思っていました。

文藝春秋Booksよりhttps://books.bunshun.jp/sp/natsumonogatari

生の苦しみから逃れる方法は、産まないこと。じゃあ、産まないほうがいいのか。

『夏物語』の強烈な問いかけに、ひたすら悩むことになりました。

ビジネス書ではなく、物語だからこそ胸に突き刺さる命題を川上さんから与えられたような気持になります。

『夏物語』の特徴・感想

『夏物語』の特徴・感想を3つにまとめました。

特徴・感想①:ボリューミーで肉厚な小説
特徴・感想②:垣間見える男性批判
特徴・感想③:子どもを産むことについての疑問符

ひとつずつ解説していきます。

特徴・感想①:ボリューミーで肉厚な小説

『夏物語』p382~383より

なかなか読み進められなかった原因のひとつに、このボリュームがあります。

540ページ以上の大長編、そして1ページに文字がびっしり詰まっているので、

読み進めている実感がわきません。とくに読書初心者の方は苦戦するかもしれません。

救いは、とても柔らかい文章体であることです。

つっかえることなく読めるので、難しい語彙や表現での挫折は回避できます。

特徴・感想②:垣間見える男性批判

「俺はそういうほかの男とは違うからって自意識もってるやつ。女性の苦しみわかります、女性をリスペクトしています、僕はそういうことちゃんと理解していますしそういう論文も書いていますし、どこが地雷かわかってます、ええ、好きな作家はウルフです――知らねえよ。能書きはいいから、お前が先月やった洗濯と買い出しと料理の回数出せっつうんだよ」

『夏物語』p388より

男性読者は、読んでて辛いかもしれませんね。

「こんなかんじで思われてんだ……」と思ってしまいます。

一方の女性読者は共感ポイントが多くあります。

複数の女性が、それぞれ異なる立場で男性や出産について話しているので「この人の言ってること、わかる」となりますよ。

特徴・感想③:子どもを産むことについての疑問符

「(中略)自分の子どもが絶対に苦しまずにすむ唯一の方法っていうのは、その子を存在させないことなんじゃないの。生まれないでいさせてあげることだったんじゃないの?」

『夏物語』p435より

『夏物語』では随所に、産むことについて問いかけされます。

なかには、今まで考えることもなかった「そもそも子どもを存在させないほうがいいんじゃないか」ということも問い質され、悩むことになります。

挫折しそうになりますが、困惑しながらも問いに答えようとする夏子の姿勢を見て、一緒に悩みぬくことができます。

最後に

ここまでお読みいただき、ありがとうございます。

夏物語』を読みたいと思った方はAmazonか楽天でポチってみてください。