こんにちは。サイジです。
本記事ではアメリカのコカ・コーラ社の年次報告書を10年分銘柄分析した結果を解説していきます。
10年分の財務諸表の銘柄分析からの個人的見解をもとに、こちらの疑問にお答えしていきます。
※投資は自己責任でお願いします。
結論から言うと、コカ・コーラ社は不況に強い安定した企業と言えます。
実はコカ・コーラって、最初は薬として販売されていたことはご存じですか?
開発者のジョン・ペンバートンは1880年頃にワインに植物の「コカ」を溶かし込んだ飲料を薬として販売しました。うつ症状の改善でたちまち人気商品になったそうです。ところが禁酒運動が激しくなり、ペンバートンが開発した飲料も販売できなくなりました。ペンバートンは販売できる飲料の開発を試行錯誤するなかで、コカ・コーラを開発することになります。ちなみに当時はコカインが含まれていたそうです。もちろん現在、コカインは含まれていません。
ノンアルコール飲料業界の中ではリーダー企業としての立ち位置を長年キープしています。
目次
コカ・コーラ社の事業解説
コカ・コーラ社はコカ・コーラやコーヒーなどの商品を消費者に販売する部門と、原液をボトラーに販売する部門の2つに分かれています。
飲料は人間の生活に切っても切り離せない商品ですし、なかでもコカ・コーラブランドは大昔から親しまれ愛されて、生活に根差していますよね。
僕は人々から長年愛されているところに着目して今後も安定して永続的競争優位性を持ち続けるのではないかと考え、コカ・コーラ社の分析を決めました。
まず競争優位性とは、文字通りその企業が他の企業との競争に優位に立てている状態のことを言います。その状態が今後も続いていくだろう企業に対して「永続的競争優位性を持つ」と投資の神様、ウォーレン・バフェットは表現しています。
僕の分析は主に「バフェットの財務諸表を読む力」に基づいています。
コカ・コーラ社の財務諸表を用いた分析
それでは損益計算書、貸借対照表、キャッシュフロー計算書とパートを分けて財務諸表の分析結果を解説していきます。
コカ・コーラ社の損益計算書
まずは損益計算書から確認していきます。
粗利益率、純利益、純利益率の推移

粗利益率は10年以上60%前後を推移しています。粗利益率が40%を超えると何らかの永続的競争優位性を持つ可能性が高いと言われています。素晴らしい数値です。
ただ純利益関連を見ると一筋縄ではいきません。永続的競争優位性を持つ企業は純利益が右肩上がりに推移し、売上高に占める純利益の割合が20%以上と言われています。
ここ10年の純利益は近年右肩上がりが描けておらず、売上高に占める純利益の割合も20%を切っている都市がほとんどです。2019年から回復しつつありますね。
粗利益に占める販管費、減価償却費の割合

販管費の割合が50~60%を占めています。粗利益の過半数を占めています。
ただし、推移はほとんど変動することなく一貫性を保っています。80%でも永続的競争優位性を持つ企業もあるので、一概に悪いとも言えませんね。
減価償却費は低水準なので、魅力的に考えることもできます。
営業利益に占める支払利息の割合

業界にもよりますが、永続的競争優位性を持つ企業は支払利息をほとんど持ちません。
ウォーレン・バフェットは営業利益に占める支払利息が15%以下であれば永続的競争優位性を持ちうると言及しています。
P&Gは2019年に高くなっていますが、それでもすべて15%以内に収まっているので優秀ですね。
しかし、近年増加傾向なので2021年の支払い利息の割合が注目です。
PER(一株当たり利益の推移)

PERも右肩上がりが理想のかたちです。10年間では右肩上がりとは言えませんね。
P&Gの貸借対照表
続いて貸借対照表の項目に移ります。
現金・現金同等物、純利益、棚卸資産の推移比較

現金・現金同等物の保有の多さは不況を乗り越える体力のようなものです。
コカ・コーラ社の現金保有は他社と比べ、圧倒的な数値を示しており、不況がやってきたとしても乗り越えられるポテンシャルを備えていそうですね。
永続的競争優位性を持つ企業は純利益と棚卸資産が増加する傾向にあります。
その視点でみると同じような推移はたどっておらず、棚卸資産は横ばいですね。
総売上高に占める売掛金の割合

商品やサービスを後払いとして取引すること
総売上高に占める売掛金の割合が一貫して同業他社より低い場合、永続的競争優位性を持っている可能性があります。
なぜなら、取引条件を妥協する必要なく、有利にビジネスを進めていけるからです。コカ・コーラ社は10年間すべて同業他社平均を上回ってしまっています。
土地および生産設備、のれん、無形資産の推移

激しい競争にさらされている企業はどんどん設備投資していく必要があり、莫大な経費が掛かります。
一方競争優位性を持っていると、現在の設備を使い切るまで使用すればよいので経費が掛かりません。
コカ・コーラ社は長期的にみても設備の増加はほとんどしておらず、他社との競争で莫大なコストをかけているわけではなさそうです。
のれん代は横ばいからの増加、無形資産は微減からの増加の推移となっています。
ROA(総資産利益率)、ROE(株主資本利益率)の推移

総資産利益率。企業が効率的に資産を使用しているかを示す。
自己資本利益率(株主資本利益率)。企業が内部留保を有効に使っているかを示す。
ROAは必ずしも高い方が良いとは限りません。
〈コカ・コーラは430億ドルの資産にたいして総資産利益率が12%、(中略)〈ムーディーズ〉は17億ドルの資産にたいして総資産利益率が43%である。(中略)たとえば〈コカ・コーラ〉に対抗すべく430億ドルを集めるのは不可能だが、〈ムーディーズ〉に対抗すべく17億ドル集めるのは、可能な範疇に入ってくる。(中略)〈ムーディーズ〉の根源的経済性は〈コカ・コーラ〉よりもはるかに脆弱と言える。なぜなら、業界への参入コストが著しく低いからだ。
「バフェットの財務諸表を読む力」より
以上のことからコカ・コーラ社のROAは高いとは言えませんが、業界への参入コストの壁が高いのであまり問題ないと考えます。
同業他社平均のROEはP&Gより高いです。企業によっては純資産、つまり分母となる数値が低いのでROEがかなり高くなっております。この項目ではP&Gの優位性は感じられませんでした。
自己株式調整済み負債比率と内部留保

自己株式調整済み負債比率が0.8以下の企業は永続的競争優位性を持つ可能性があると言われています。
コカ・コーラ社の自己株式調整済み負債比率の推移は上昇傾向ですが、10年間0.8を下回り続けているので、基準を満たしていると言えます。
企業の経営が黒字なら内部留保が積み増しされますが、赤字だと切り崩していくことになります。内部留保は企業経営の健全性を見極めるうえで非常に重要な指標です。コカ・コーラ社は右肩上がりで増加しているので、健全な経営が続いていますね。
長期借入金と短期借入金の推移

短期借入金が長期借入金を上回っているとリスクがあります。コカ・コーラ社は2014年まで同じ値を推移していますが、以降は短期借入金が減少しています。
ただ、長期借入金が増加しているのが懸念事項です。永続的競争優位性のある企業は長期借入金が少ない、もしくは0になるので。
キャッシュフロー計算書
最後にキャッシュフロー計算書の項目を確認していきます。
純利益に占める資本的支出の割合と自社株買いの推移

永続的競争優位性を持つ企業は純利益に占める資本的支出の輪入相が減少します。新たに資本投資する必要がないからですね。コカ・コーラ社は2017年に一時跳ねあがっていますが、それ以外は横ばい、減少をしているのでおおむねOKと考えても良い感じがします。
自社株買いも毎年行われていますね。四季報に載っている同業他社で10年連続自社株買いを行っている企業はありませんでしたので、非常に優秀ですね。
コカ・コーラ社の財務諸表分析まとめ
永続的競争優位性チェックリスト | KO |
【損益計算書】 | |
粗利率が40%以上である | 〇 |
粗利に占める販管費の割合が一貫しており、かつ低い。 | × |
粗利に占める研究開発費が少ないor0 | ー |
粗利に占める減価償却の割合が低い | 〇 |
営業利益に占める支払利息の割合が15%以下 | 〇 |
純利益ー(特益+特損)が右肩上がりか | ー |
純利益が右肩上がりか | × |
売上高に占める純利益の割合が20%以上 | × |
1株当たり利益の長期的推移(継続して増加しているか) | × |
【貸借対照表】 | |
現金保有の多さ | 〇 |
棚卸資産と純利益がともに増加する傾向 | × |
売上高に占める売掛金の割合が同業他社よりも低い | × |
のれん代が増加している | △ |
無形資産が増加している | △ |
あまりに高い総資産利益率(ROA)は競争優位性の脆弱さを表している場合がある | 〇 |
長期借り入れをすることがほとんどない。もしくは0 | △ |
短期借入金が長期借入金を上回っていない | 〇 |
自己株式調整済み負債比率が0.8以下 (自社株式を加えた値を元に負債合計/純資産合計) | 〇 |
優先株を発行しない | 〇 |
内部留保(利益剰余金)の長期的かつ着実な増加 | 〇 |
株主資本利益率(ROE)が平均よりも高い | × |
【キャッシュフロー計算書】 | |
資本的支出が低くなる(純利益50%以下、25%以下) | △ |
自社株買い | 〇 |
財務三表を分析した結果がこちらの表となります。
コカ・コーラ社はバフェット銘柄として有名ですが、2011年からの10年間は調査した項目での成績は輝かしいものとは言えません。コカ・コーラなど素晴らしいブランドは多いですが、僕は即断せずに他の優良企業を探しますね。